訪問介護を事業主としてみる ― 人生を賭ける覚悟が必要な理由 ―

介護に関するニュースと私の意見

シリーズ1の要約

財務省は利益率が高いと言っていますが、違います。
収益構造をみてください。

向いているのは福祉職経験者か、資金的に余裕のある人。場所を作りたい人など。
それ以外の場合は、かなり覚悟が必要だと思います。

1.訪問介護を事業主としてみる

訪問介護の事業を始めてみて感じたのは、
この仕事には向き不向きがはっきりあるということです。

訪問介護の仕事は、
制度・書類・経営だけで回る仕事ではありません。

むしろ現場を知らないと、運営がかなり難しくなります。

今回は、実際にやってみて感じた
「訪問介護事業に向いている人」について書いてみます。

2.訪問介護は“制度の仕事”でもある

訪問介護は、人を助ける仕事というイメージが強いと思います。
もちろんそれは間違っていません。

ただ実際に運営してみると、
制度に合わせて動く仕事でもあります。

例えば

・介護保険のルール
・サービス内容の制限
・記録
・請求業務

こういった制度の理解がないと、事業は回りません。

「いいことをしている」だけでは成立しないのが、
訪問介護の現実でもあります。

3.事務仕事がかなり多い

訪問介護の事業は、想像以上に事務仕事があります。

例えば

・ケア記録
・請求
・書類作成
・行政対応

現場だけでなく、事務作業も事業運営の大きな部分です。
この部分が苦手すぎると、事業として回すのが難しくなります。

さらに、訪問介護の事業を始めるにはいくつかの条件があります。

・個人事業主では認可が取れず法人が必要
・常勤換算など人員基準がありスタッフの配置も考慮
・法人設立、会社運営、人材採用、処遇改善加算対応など

一般的に、業界の中では「始めてから1年ぐらいで行政が確認のため指導にくる」と言われています。

ここで、認識の違いや事務処理などのミスがあれば返戻(国にお金を返す事)が発生します。

そして、処遇改善加算の環境を整えたあとは、毎年申請と実績報告が必要です。ここでも不備があれば返戻です。

このように、意図的でなくても処理を間違えると返戻(お金を返すこと)が発生します。

売上だけを追い求めて事務処理が追いつかず、1年未満で事業をたたんでしまったケースもあります。

現状、人を集められれば誰でもできてしまいますが、
正直、訪問介護未経験者がいきなり始めるのは大変だと感じます。

4.それでも一番大事なのは現場

ただ、色々ありますが
一番大事なのはやはり現場だと感じています。

訪問介護は

・利用者さんの生活
・介護スタッフの働き方

この両方があって成立します。

現場を知らないと

・何が大変なのか
・どこで困るのか
・どんなサポートが必要か

これが分かりにくくなります。

その結果、人が離れ、
事業が続かなくなるケースも少なくありません。

5.向いている人は限られている

実際にやってみて思うのは、
訪問介護事業に向いているのは「現場に関われる人」か「福祉職経験者」、
そして「お金に執着しない人」である必要があります。

その上で必要なのが

・利用者と職員の生活の事を第一に考えられるか。
・その上で、自分の生活が成り立つか。

この2点です。

6.訪問介護の構造について

1.サービス提供責任者1人につき、どんな人でも40人まで利用者さんを持てます。
2.管理者とサービス提供責任者を兼任する場合、訪問サービスに出ることができなくなります。
3.要支援だと、国(市町村)と利用者さんからいただくお金の合計は、1訪問につき2,000円ほどです。
4.最低賃金は1,000円を超えています。
5.処遇改善加算は最低賃金を下回ってはならず、少なくとも最低賃金への上乗せが必要になります。
6.訪問介護事業と要支援事業の両方の事業をやっている事業者は原則、職員への支払いを同一相当にする必要がある。
7.要支援事業は処遇改善加算が存在しない。

これを踏まえて、実際の数字に当てはめてみます。

【例】収益モデル:要支援2

国と利用者様合わせて2,000円ほどいただいて、職員に1500円ほど支払う必要があります。
よって、1訪問あたり、事業所の取り分は500円程度です。

週3回利用のご利用者様を40人持った場合どうなるか。
事業所:500円×3回×4週×40人=240,000円/月

ここから、現場に出れない職員や、手袋などの消耗品、事務の備品、
事務所の光熱費・家賃、請求ソフト、
ケアプラン連動システムの月額料金、ITソフトの導入費など、

介護事業をする為の維持費を差し引いていく必要があります。

また、サービス提供責任者と、管理者は常勤者である必要があります。
これを踏まえ、サービス提供責任者と管理者を兼任させない場合は、固定費は2倍かかります。

ただ、兼任させないメリットは、両者が有資格者であればサービスに出ても良くなる点です。

どっちにしろ、下手したら普通に赤字です。

これは単価設定上かなり厳しい条件で、
要支援で入れる最大回数かつ、受け持つことができる最大人数で計算しています。

実際は、要介護者で身体介護付きを毎日などがあれば、売り上げは良くなってきます。

ただ、未経験の場合、
営業の仕方やケアマネさんとの信頼関係がなければ40人埋まらない可能性もあります。

そう言う意味でも、福祉職経験者である方が安定はします。

7.介護事業の今後の方針と財務省の意見

要件や資格の関係で現場に出れない職員の配置が必要だったり、
施設なら介護職員が介護に集中できるように、
業務サポートとして清掃員の導入も推奨されています。

また、介護現場の生産性向上の為、ケアプラン連動システムの導入などといった
IT機器の導入費や維持費も必要になってきています。

かえって経費がかかっていますが、これは行政が推奨している事です。
これらを行わないと、介護職員に支給する為の処遇改善加算のランクが下がります。

そして現状、財務省は、

介護サービスは「利益率が高い」報酬の適正化を要請
2027年度改定

と言っています。

あなたは、先ほどの収益構造をみて、本当に利益率が高いと思いますか?

まとめ

福祉職が人に雇われたままよりは、
本気で動けば生活が良くなる可能性があるかなぁと思う構造です。
今参入したところで先行きは真っ暗ではありますが…。

まとめとして、
まずは訪問介護員として現場で経験を積むことで、自分に向いているかを確かめられます。
その上で、本当に事業主として挑戦したいと思えた方にだけ、覚悟を持って進むことをおすすめします。

厳しいようですが、この事業は本来、
「お金を持っている人が始める事業」であって、
「お金が欲しい人が始める事業ではない」と思います。

それでも私のように、なんらかの信念上始めたい人は、
自分の人生を福祉に賭ける覚悟を決めなければなりません。

それを踏まえて、
訪問介護の事業は

・制度
・事務
・現場

この3つで成り立っています。
特に大きいのは現場への理解です。

利用者を守るだけでは成り立ちません。
成り手を守らなければ無理なんです。

もしこれから訪問介護の事業を考えている方がいたら、
現場とどう関わるかは、一度考えてみるといいと思います。

事業を始める前に整理したい人へ

私自身も訪問介護事業を始めるとき、
「現場・制度・事務、それぞれで何を優先すべきか」が
最初はよく分かりませんでした。

・自分に向いているのか
・どこから手をつけるべきか
・現場経験はどう活かせるか

こうしたことを整理するだけでも、
スタートがずっとスムーズになります。

もし訪問介護事業の一歩目を踏み出す前に、
自分の状況を整理してみたいという方は、
実際に自分で立ち上げて運営している先輩に
話を聞いてみることをお勧めします。

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