③偶然の産物──モカジャバとバレルエイジドコーヒーのお話

リラックスタイム

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コーヒーの世界には、「狙って作った味」以上に人の心をつかむ、“偶然の産物”があります。
その代表例が モカジャババレルエイジドコーヒー
どちらも今では洗練されたブレンドとして知られていますが、始まりはもっと雑で、もっと素朴で、そしてとても「らしい」物語を持っています。

本稿では、二つのコーヒーがどのようにして生まれ、なぜ人々が魅了され続けるのか──一般的に語られてきた起源をもとに、その背景を紐解いていきます。


1. モカジャバ──海の上で生まれた“混ざっちゃったブレンド”

■ 起源(一般的に語られる説)

モカジャバは、
イエメンの「モカ港」を経由するモカ(アラビア種)
インドネシア・ジャワ島産のジャバ(ティピカ系)
この2つが 船の中で偶然混ざってしまったことが起源 と広く言われています。

17〜18世紀、コーヒー豆は船で世界各地に運ばれていました。
当時の船倉は現代のような密閉されたコンテナではなく、袋詰めされた豆が“ほぼ露出した状態”で積み上げられていました。

そのため――

  • 荒れた海で積荷が崩れ、袋ごと混ざる
  • 商人が積載量をごまかすために、意図的に混ぜる
  • そもそも港での管理が雑で、別品種が入り込む

こうした “混ざっちゃった” は、日常茶飯事だったのです。

■ 偶然なのにおいしかった

しかし面白いことに、モカとジャバの特徴は絶妙に補い合いました。

  • モカ:華やかで果実味のある香り
  • ジャバ:コクが深く、土っぽい重厚感

これが混ざることで、
「軽やかさ × コク」 という見事なバランスに。

「なんだこれ、うまい!」
そうして誕生したものが現在の モカジャバ(Mocca-Java) とされています。

偶然がもたらしたブレンドは、やがて世界中の焙煎士にとって“王道の組み合わせ”となり、今もなお愛されています。


2. バレルエイジドコーヒー──保管方法の“副作用”が革命に変わった

■ 起源(一般的に語られる説)

バレルエイジド(樽熟成)コーヒーもまた、
コーヒー豆を洋酒樽に入れて運んでいた時代の偶然が起源 と語られています。

17〜19世紀の航海では、コーヒー豆の輸送に ウイスキー樽やラム樽、ワイン樽が再利用 されていました。
当時の樽は液体を貯蔵していたため、内部に香りや酒分がしっかり残っていたのです。

そこにコーヒー生豆を入れて海を渡らせると――

  • 樽に残った酒の香り
  • 樽材のオークの香り

これらが豆に移り、自然と“樽香コーヒー”が生まれてしまった、というわけです。

もちろん当時の商人たちは、香り付けを目的にしていたわけではありません。
「樽が余ってたから使っただけ」
「船旅で湿気から守るには都合がよかった」

そんな“偶然の保管方法”が、結果として全く新しい味わいのコーヒーを生み出したのです。

■ 偶然なのにやたら香りが良かった

樽熟成によって生まれる香りは、

  • バーボンの甘いバニラ香
  • ラムの黒糖のようなニュアンス
  • ワイン樽のベリーの香り

など、多彩で個性的。
「これは新しいジャンルになるぞ」
と再評価されたのが、現代の バレルエイジドコーヒー です。

今ではクラフトロースターの代名詞のような存在になり、
“偶然の副産物” が意図的な技術に昇華した良い例になっています。


3. 二つの共通点──「意図していなかったのに」おいしかったという奇跡

モカジャバとバレルエイジドには、三つの共通点があります。

① 両方とも「狙ってできた味」ではなかった

  • モカジャバ → 船荷が混ざってできた
  • バレルエイジド → 樽が偶然香りを移した

どちらも“偶然の事故のようなもの”から生まれました。

② でも、偶然が奇跡の相性を生んだ

  • モカ × ジャバの調和
  • コーヒー × 樽香の相性の良さ

どちらもやってみないと分からない組み合わせでありながら、
実際には驚くほど魅力的な味に仕上がりました。

③ 人が後から「これ良くない?」と価値づけた

ブレンドや熟成の技術として洗練されたのは、もっと後。
最初は意図されていなかったものが、
人の舌に評価され、文化として残り続けたのです。


4. 偶然から始まるストーリーは、コーヒーの醍醐味

「こうしようと思ってやったことより、
たまたま起きた変化のほうが美味しくなることがある」

コーヒーは農作物です。
その時々の気候や発酵、乾燥、焙煎度、湿気…
すべてが味に影響します。

つまり、
“不完全さ” が美味しさを生む世界 でもある。

モカジャバとバレルエイジドコーヒーは、
まさにその象徴です。

  • 混ざってしまったからこそ生まれた味
  • 樽に入れられたからこそ生まれた香り

人の計画を超えたところにある“偶然の贈り物”。

だからこそ、多くの人が惹かれ、
今も進化し続けているのでしょう。


おわりに──肩の力を抜いて偶然を楽しむゆとりを

コーヒーは本来、とても自由な飲み物です。
そして、自由であるがゆえに、予想外の出会いが起こります。

モカジャバも、バレルエイジドも、
「狙っていないのに上手くいった例」ですが、
それこそがコーヒーの魅力であり、
私たちが惹かれ続ける理由ではないでしょうか。

あなたの一杯にも、まだ知らない“偶然の美味しさ”があるかもしれません。

次回は自宅で楽しむバレルエイジドを書いていく予定です。

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