介護過程の5つのステップ
介護過程は次の5ステップで成り立っています。
1.情報収集:利用者の様子を観察し、行動や環境を記録
2.情報整理:収集した情報を整理して問題点を見つける
3.計画立案:どんな支援をいつ、どう行うか決める
4.実施:計画に沿って支援を行う
5.評価・修正:支援の効果を確認し、必要に応じて改善
計画立案の考え方(スリッパ事例)
利用者(しょーくん)が「姉にスリッパを履いてほしい」と思っている
でも姉はまだ足元が不安定で危険
支援者の目標は「安全を確保しつつ、しょーくんの気持ちを尊重すること」
短期目標の例
安全にスリッパを受け取る
受け取ったスリッパを一時保管する
スリッパを履けないことを説明する
ポイント:順番を守ることで安全性と学習効果を両立できます。
支援の実施ポイント
受け取り動作:手渡すときに危なくないか観察
一時保管:置き場所を決めて安全に置けるようサポート
説明:脱げる様子を見せるなど、体験型で理解を促す
褒める:小さな成功も認める
NG例:無理に取り上げる、叱る、物を投げる→ 利用者の尊厳を傷つけ、逆効果になります
評価と修正(PDCA)
現状把握:計画通りにできたか観察
分析:うまくいかなかった理由を考える
修正:方法や順番を変えて次回に反映
【チェックリスト例】スリッパ事例:介護過程チェックリスト(現場・家庭用)
目的:安全/尊重/分かりやすさ
使い方:観察→実施→記録→評価→見直しの順にチェック。
1) 事前準備(情報の確認)
しょーくんの「スリッパは履くもの」という思いを把握している
姉は現在スリッパが履けない(転倒リスクあり)ことを(支援者が)把握している
受け取り用の一時保管場所(安全な定位置)を決めた
今日の体調・機嫌・環境の確認をした
メモ:必要があれば家族・スタッフ間で役割分担と声かけ文言を共有。
2) 実施(段階的に・無理なく)
【短期①】
スリッパを受け取り「ありがとう」と気持ちを受け止めた
受け取り後は安全な定位置に一時保管した
【短期③】今は履けない理由を短く説明した
(例:「今は脱げちゃって危ないの」) 視覚・体験の補助を使った
(例:脱げる様子を見せる、写真・カード) できた行動をその場でほめた
(行動を強化) 足元・通路の安全確認を行った 無理な誘導・否定的な言い方を避けた
3) その場の記録(短く具体的に)
安全に受け取れた回数を数えた
一時保管ができた回数を数えた
説明に対する反応(うなずく・表情・言葉)をメモした
不安・不穏のサインが出た/出なかったをメモした
例:受け取り3回OK/保管3回OK/説明2回→1回うなずく、1回首ふる。
4) 評価・修正(小さく見直す)
言葉だけで難しければ、視覚・体験の比率を上げる
一時保管の定位置が分かりやすいか見直した(表示・写真)
声かけ文言をより短く・肯定形に調整した
次回の目標(回数/方法)を1つ決めた
次回目標の例:「受け取り→保管を今日と同じ手順で3回」
5) 共有メモ(家族・スタッフ間)
今日の様子を家族/スタッフに短く共有した
うまくいった声かけ・手順を記録に残した
次回の担当者が迷わないように一言メモを付けた
共有例:「受け取り・保管は安定。説明は図カードの方が反応◎」
スリッパの受け取りは安全にできた
置き場所の手順を理解できた
説明を見て理解した様子があった
強制や叱責はなかった
評価は毎回記録し、次の支援に活かします。
支援者としての意識
利用者のこだわりを無理に変えない
段階的に代替行動を学習させる
支援者自身の安全も確保する
周囲と情報を共有し、連携して支援する
こうすることで、不適切な支援(叱責や強制など)を減らし、安全で効果的な介護が可能になります。
まとめ
介護過程は安全+学習+尊厳を守るための基本
支援は計画→実施→評価→修正のサイクルで行う
小さな成功体験を褒めることが効果的
不適切な支援は逆効果、記録と共有で改善を
詳しくはリンクへ
障害児家族にもオススメする介護過程とは
初回
→アセスメントについて(前編)
4回
→計画について(中編1)
5回
→計画について(中編2)
その他、ABA(応用行動分析)やABC分析、
代替行動の差別強化(DRA)などの理論はこちら
→段階的支援の理論背景と実践― しょーくんのケースから学ぶ、
科学的に裏付けられた支援の考え方
→急な行動変容はリスク ― 段階的支援の科学的指導